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aircheck

好きな曲 / 気になった曲 / 観たライブ などについて書いています

吉澤嘉代子 / 絶景ツアー "夢をみているのよ" @東京国際フォーラム

昨年行った箒星ツアーでも思ったことだけれど、吉澤さんのライブはライブと言うよりもミュージカルを観ている感覚に近い。特に今回は東京国際フォーラムという会場の雰囲気が、ライブハウスよりもその世界観に合っていたように思う。今回の公演も曲の合間に寸劇を交えつつ、「とある少女の物語」としてセットリストも物語の流れに沿うように展開していった。

 

  

ステージ上には楽器と共にいくつもの段ボール箱が散らかしたように置いてあった。まるで引っ越ししたての部屋のよう。

そこに吉澤さんが「東京絶景」のジャケ写で着用していた真っ白な衣装で登場。この衣装の白が照明に照らされて、曲によっては清楚にも幻想的にも艶めかしくも見えた。

 

 1曲目は「雪」。前作「箒星図鑑」に収録されている曲で、「箒星図鑑」においてはアルバムのテーマである少女時代の終わりを意味するエピローグ的な立ち位置だったと思う。しかしそれが今回は冒頭に披露されたことで、この曲は新しい始まりを意味する曲でもあったのだ、これから「箒星図鑑」の少女の続編が始まるのだ、ということが告げられたようだった。

 

ここから主人公・嘉代子ちゃんと愛犬・ウィンディとの寸劇を挟みながら物語が進行していく。

上京し一人暮らしを始めて新しい生活に心躍る嘉代子ちゃんは、バイト先の回転寿司の店長に恋してしまう。そんな新しい恋のワクワクドキドキ感を表現するかのように、「ひゅー」「ユキカ」「綺麗」といったキュンキュン乙女恋愛ソングが続く。

確かにこれは歌手・吉澤嘉代子さんの曲なのだけれど、ここでは主人公・嘉代子ちゃんの心情に重ね合わせて歌われているわけで、聴きながら感情移入せずにはいられなくなってくる。と同時に、そんな嘉代子ちゃんが一体どのタイミングで今回のアルバムに収録されている失恋ソング「化粧落とし」を歌うのだろうかと考えて少し怖くなった。

 

その後の「ガリ」では吉澤さんが客席に降りてお寿司のガリをばら撒くというパフォーマンス*1。「手品」では客席にいた女の子をステージの上に呼び出して手品に協力してもらったりと、観客一体となって盛り上がる演出が続く。

 

そんな盛り上がりの後、再び寸劇へ。 店長に奥さんがいたということを知り恋破れる嘉代子ちゃん。新しい生活と恋に浮かれていた彼女の気持ちは一気に絶望へと叩き落され、ここでついに「化粧落とし」が投下される。

私はこの日のセトリはここがひとつのクライマックスであったと思う。ここまでの流れで完全に嘉代子ちゃんに感情移入していた私は、ロック要素の強いこの曲に込められた彼女の怒りや悔しさや悲しさを痛いくらい感じ取ってしまった。

けれども私は吉澤さんからはいわゆる情念系のような怖さは感じない。彼女の曲にはキュートでコミカルな面もあるから、聴いた後に決して暗い気持ちを引き摺ったりはしない。この曲も「ルージュの伝言残したら警察沙汰」なんて一節があるから、怨みソングになりきれない微笑ましさがある。

 

それから彼女の感情を浄化していくかのように、新旧の曲を織り交ぜながら物語は進んでいく。

そして物語が終盤にさしかかったところで、嘉代子ちゃんの成長を傍で見守ってきた愛犬ウィンディが突然姿を消してしまう。しかし失恋の絶望と涙を経て成長した彼女は「movie」で「もうわたし 大丈夫」と歌い上げ、ウィンディに別れを告げる。

相棒の声が聞こえなくなるという場面を通して主人公の少女の成長を描写するなんて、まるで魔女の宅急便みたいだ。と思ったところで「ストッキング」が歌われたので、これはきっと吉澤さんなりのオマージュなのだろうと解釈することにした。

 

ここまで緻密に作り上げられた世界観と寸分の狂いのない圧倒的な歌唱力を見せつけておきながら、MCになると吉澤さんはフニャフニャした喋りでグダグダと落ちの見えない話を連発する。聞いているこちらが不安になってしまうくらいのMCなのだけれど、今回のPAさんやローディーさん、スタッフさんたちはデビューの頃からずっと一緒にやってきた方々だそうで、「かっこいい言い方になっちゃうけど、みんなを国際フォーラムに連れてこられて良かった」と言っていたのが印象的だった。

最後の曲はアルバム同様「東京絶景」。このとき吉澤さんがギターのカポの位置を直さないまま曲に入ろうとしてしまい、その瞬間にローディーさんが下手からサッと出てきてカポを直し、颯爽と捌けていくという一幕が。客席からは吉澤さんの天然ぶりに対する笑い声と、ローディーさんに対する「すごい・・・」という賞賛の溜息が漏れていた*2

 

その後アンコール2曲を終え、バンドメンバーがステージから捌けて終わり・・・と思いきや再びアンコールの声が上がったためもう1曲やることに。

「何が良いんだろう?」という吉澤さんの問いかけに客席からリクエストの声が飛び交うも、「(今回のバンドメンバーでは)練習してない曲があるから・・・」ということでことごとく不採用。とか言ってツアーファイナルだし本当はダブルアンコールまで織り込み済みなのでは?なんて思っていたけれど、なかなか決められない吉澤さんの様子からしてガチで計画になかったのかも知れない。

で、結局本編でも披露した「ケケケ」をもう一度やることに。欲を言えば本編でやっていない曲を聴いてみたかったけれど、やっぱりこの曲は何度聴いても盛り上がる。観客総立ちでケケケダンスを踊って公演は終了した。

 

見終えた後、箒星ツアーのときと同様、「すごい才能を見てしまった」という気持ちにさせられた。

吉澤さんは夏にまたアルバムを出すそうで、そちらも楽しみです。

 

(公演日:2016年4月30日)

東京絶景(初回限定盤)(DVD付)

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*1:ちなみに私は二階席だったため全く取れず・・・。

*2:ちなみにこのローディーさんはライブ全編通して動き回る吉澤さんのマイクコードが他の楽器やセットに引っかからないよう調整していて、そのマイクコードさばきも華麗でした。