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aircheck

好きな曲 / 気になった曲 / 観たライブ などについて書いています

サカナクション / 多分、風。

 

当初は8月のリリース予定だったものの、制作進行上の都合により発売延期となってしまったという曲*1

山口一郎さんが歌詞が書けないとぼやくのは毎度毎度のこと、とは思っていたのですが、まさか発売延期にまでなってしまうとは・・・。そういった事情を知らされてしまうと、聴く側としては「ほほう、これが発売延期にするほど拘りに拘り抜いた楽曲ですか・・・どれどれ・・・」とついハードルを上げてしまうのが正直なところ。

そういうわけで「多分、風。」というタイトルが発表された時点で「曲名、なんかダサくない・・・?」というネガティブな感想から始まってしまい、ティザー映像で曲の一部を聴いたときも、別にいつも通りのサカナクションだな、という印象で、特に目新しさは感じませんでした。

 

それがフルで聴いたら、「良いじゃん!この曲!」となりました。

電子ドラムの音色をはじめ全体的に80年代を思わせる曲調、これは前作の「新宝島」でもやっていた試みなので、最初は「ああ、またこのパターンね」と思ってしまったのですが、今回は 「新宝島」よりもその路線を研究して突き詰めてきたな、と感じました。そう思うと、第一印象ではダサいと思ってしまった「多分、風。」という曲名も、なるほど狙ったダサみだったのだな、と納得がいきます。大変失礼しました・・・。

 

あと、良い意味で、重くない。さらっと聴ける。

サカナクションの曲はいつもどこか内省的で、主人公の内側に秘めた感情を描いたものが多いなと思っていました。

ですが、「多分、風。」からはそうした要素をあまり感じなかったです。従来の曲と比べると主人公の主張が弱めで、存在感が薄いような気がするのです。バンドマンのアーティスト性を好む人からするとその点が物足りなく感じられるのかも知れないですが、その分、大衆に向けて広く開かれたポップソングを目指したのかな、と思いました。

 

そして、主人公の代わりにメインとなって描かれているのは、"あの娘"。

男性目線で女の子、それも名前も内面も知らない女の子にハッと視線を奪われる瞬間を描いています。この点は、資生堂のタイアップだということを意識して作ったのだろうな、という気がします。

自分はリアルタイム世代ではないので、これは的外れな意見かも知れませんが、「80年代」「資生堂」「男性が女性に視線を奪われるというシチュエーション」、そして季節は「夏」というキーワードで、RATS&STARの「め組のひと」を思い出したりもしました。

曲調もイメージする情景も異なるし、何よりも描かれている女性の美のベクトルが全然違う(「め組のひと」は大人の女性の色っぽさを連想させるけど、「多分、風。」の場合は清楚な少女というイメージ)のですが、「多分、風。」にもどことなくそうした"往年の化粧品のCMソング感"を感じたのです。その"それっぽい感"が、現代のロックバンドであるサカナクションの手にかかるとこういう形になるのだな、と面白く思いました。新しいのに懐かしいような、初めて聴くのに既に知っているような、そんな不思議な感覚をおぼえました。

従来のサカナクションの楽曲は内省的な要素があった分、作者である一郎さんのアーティスト性を強く感じさせる出来になっていて、曲単体では良曲でもタイアップ曲としてはどうなのだろうか?と思うことが個人的には多かったです。ですが、この曲は曲単体で聴いても、資生堂のタイアップ曲だということをふまえて聴いても楽しめる仕上がりになっていると思いました。

  

以上のことから、拘って拘り抜いて制作したのだなということが察せられるし、結果として発売延期になってしまったのも仕方ないよね、、、

と、言いたいところなんですが、やっぱり、当初の予定通りのリリースで聴きたかったというのが本音です。曲調的にも、歌詞の世界的にも、これは夏の曲だ、と思うのです。実際に、日焼け止めのタイアップであるということを念頭に置いて作られていたのではないかと思いますし・・・。

良い曲だと思うだけに、ぜひともこういう事情は今回限りであってほしいなぁ、と思ってしまいました。

  

多分、風。 (通常盤[CD])

多分、風。 (通常盤[CD])